苦手だった珈琲が好きになれた奇妙な物語

日曜日の朝8時過ぎになると、両親が温かなコーヒーを淹れていました。父親はコーヒーにこだわりがある人。だからインスタントコーヒーではなくて、どこかのお店で買ってきたちゃんとした粉コーヒーでした。子供の頃、コーヒーの匂いを嗅ぐと胸焼けを起こしていました。

「どうして大人はこんなにも変な匂いがする飲み物を喜んで飲むんだろう? 全然美味しそうなんかじゃないのに」。そんなふうに思っていた私も、二十歳を過ぎてからコーヒーデビューをすることになりました。きっかけは卒業論文。何を題材にしたいのか、どんな内容を書きたいのか、どうすれば教授が卒論の題材に頷いてくれるのだろうか。

さっぱりわからなくて、悶々と悩み続けていました。

私に重くのしかかっているストレスを解消してくれる、お手軽な何かはないだろうか──そんな不純な動機で手を伸ばしたのが、インスタントコーヒーでした。

その時にはコーヒーを飲めなくもなかったのですが、飲む時はミルクたっぷりと決めていました。でも、卒論のプレッシャーで甘ったるい飲み物なんか欲しくない。だから「えいやっ」と勢いよくブラックコーヒーを飲みました。悶々と悩む心がコーヒー如きで晴れるなら晴らしてみろ! そんな暴論を胸中に抱え、そして……美味しかったのです! 

びっくりするくらい、コーヒーが美味しかった! 

嫌っていた匂いは気持ちを落ち着かせてくれる香りに変わり、混乱し続けていた感情がふっと気を楽にできました。そこから私は毎日インスタントコーヒーを飲む習慣ができました。インスタントコーヒーに飲み慣れると、ちゃんとした豆で飲むコーヒーが気になり始めました。

「なら、父親に相談してみよう」。私の中で父親はコーヒーマイスターのような人。だからきっと素敵な提案をしてくれるはず! 父親に相談すると、私が住んでいる家の近くにあるタリーズコーヒーをおすすめしてくれました。

「大事なのは、いろいろな豆に挑戦して、自分の一番を見つけること」。父親がくれたアドバイスに従い、私はあちこちのコーヒー店を覗くようになりました。

旅先で出会った喫茶店、地元の隠れた名店、友達のおすすめする店……どれもコーヒー豆というものから抽出される飲み物なのに、お店や豆の種類によって、まるで見える世界が違う。なんて美味しく、不思議な飲み物なのだろう。

コロナ期間中は喫茶店巡りを控えていましたが、そろそろ自粛も終わりにできそう。私の一番を見つけるために、そろそろ喫茶店巡りを再開する予定です!

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